イタリアのチーズが危機に EUの粉乳自由化で
イタリアでは、EUによる粉乳の自由化をめぐって、
チーズ業界から反対の声が挙がっています。
イタリアは、世界的に評価されるチーズの生産大国。
各地域において、
先祖代々伝わる昔ながらの製法で
カチョッタ、ペコリーノ、リコッタ、ストラッキーノなどといった
数多くの特産チーズが製造されています。
その成長を現在まで支えた一つに挙げられるのが、
1974年に制定された法律。
乳製品の製造を目的とした粉乳の所持および使用を禁止しています。
その結果、イタリア国内の乳製品の品質は高水準を保ってきました。
ところが、イタリアの法律に相反して、
EUは粉乳使用の自由化を提言。
これにより、
487種類ものイタリア特産チーズが危機に瀕すると言われています。
『
パノラマ』誌によれば、
粉乳の自由化は、EUで政治的リーダーを担うドイツとフランスの思惑があるとのこと。
既にイタリアでは、EUの圧力で粉乳の輸入が昨年度の同時期に比べ15%増加。
その輸出元の3分の2は、ドイツとフランスとされています。
粉乳の導入により、
1キロあたりわずか2ユーロの粉乳で、
牛乳にすると10リットル、モッツァレラなら15個、ヨーグルトならば64カップもの乳製品が生産可能になります。
安価な乳製品の大量生産が可能になることで、
コルディレッティ(Coldiretti:イタリア農業組合)は、
品質の低下や詐欺の危険性、食文化への影響を指摘。
「粉乳の使用は、消費者を欺き、損害を与える行為。
世代を越えて守られてきた食文化が危機にさらされ、
また、経済、雇用、環境問題にも影響が出るだろう。
生乳ような地域特有の香りはなく、
味は均一になり、栄養成分も低下する。」として、警鐘を鳴らします。
『
ラ・レプブリカ』紙によれば、
イタリアの乳製品加工会社の大手、グラナローログループのジュゼッペ・カルツォラリ社長は、
イタリアとEUの基準のずれを指摘。
「イタリアにおける製品の製造過程では、
チーズやヨーグルトの生産に液体の乳を使用するなど、
品質や食の安全性が基準になっている。
これは、イタリア国内やヨーロッパの消費者だけでなく、
イタリアの生産者や加工会社を保護するものだ。
だが、市場の透明度やラベル表示に関するEUの規定は、
我々の製品の保護を前提にしていない。」と訴えています。
以前、モッツァレラチーズでも一悶着あったのを記憶しています。
伝統的な正統モッツァレラは、水牛の乳を使用しているのですが、
より安価な牛乳のモッツァレラが出回るようになり、
牛乳のモッツァレラも、「モッツァレラ」と表示できるようになりました。
(正統モッツァレラは、現在、モッツァレラ・ディ・ブーファラ:水牛のモッツァレラと表示。)
そのうち、粉乳のペコリーノやカチョッタチーズが出回るようになるのでしょうか。
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